名機LP12からネットオーディオの先駆者に。革新的メーカーLINNの魅力とは

アイキャッチ画像引用元:LINN公式ウェブサイト

現在のオーディオシステムにデジタルストリーミングを選択されているオーディオ愛好家には避けて通れないスコットランドのオーディオメーカーLINN(リン)。アナログプレーヤーの名機の一つであるLP12の開発から始まったLINNが、自社で唯一無二のCDプレーヤーであるCD12、その後独自レーベルを創設しハイレゾ配信、デジタルストリーミングに移行する時代の最先端を追及している歴史を今回はご紹介できればと思います。

LINNの原点

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

名声の高い英国のオーディオメーカーのなかでも一際目立つポジションに位置するのがLINN(リン)です。レコード時代から養ったハイファイ再生の技術を根底にデジタルオーディオ時代の草分けとなり、現在はネットワークオーディオを先導する存在としてオーディオ愛好家の関心を集めていますが、元々LINNプロダクツの原点はターンテーブル「LP12」にあります。

LINN LP12(アナログプレーヤー)

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

LP12は創業者アイバー・ティーフェンブルン(Ivor Tiefenbrun)氏の目覚ましい発想から生まれ、革新的で継続的という相反する長所が両立した名機です。しかも、驚くべきことに創設時に開発されたLP12は発売から半世紀近く経った現在も継続販売中の現役モデル。基本の個体は変わらず、電源部、モーター部、トーンアーム、カートリッジなどを常にアップデートしていき、時を経て進化し続けています。アイバー・ティーフェンブルン氏は、品質アップグレードを継続していけるようにモジュラー方式とし、時代を経て進化するテクノロジーをLP12ユーザーが享受できるように設計しました。

これにより、LP121973年に発売された最初のモデルから、全てのユーザーが、最新バージョンにフルアップグレード出来るターンテーブルとなり、 ユーザーにLP12への愛着を持たせる結果となりました。

そして2016年、イギリスの「What Hi-Fi」誌で、「LP12は過去40年で最も重要な製品の一つ」、「歴史上最も人気を獲得しているハイエンド・ターンテーブルである」と評され、同国の「Hi-Fi Choice」誌では「UKでこれまで販売された中で最も重要なコンポーネントである」、さらにアメリカの「Stereophile」誌は「不朽の名作、革命者、偶像破壊者、真の勝者」と高く評価しています。

『LINN LP12 主な仕様』
●駆動方式:ベルトドライブ
●駆動モーター:24極シンクロナスモーター
●ターンテーブル重量:3.75kg
●スピード偏差:(33/45rpm)0.03%
●サイズ:445mm(幅)x 356(奥行き)x 140mm(高さ)
●重量:10kg
●価格:¥330,000(税込) ※本体のみ価格(2022年2月価格改定)

 

LINN社ビジネスの核

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

LP12の成功に続いて、アイバー氏の次なる挑戦は生産性の向上でした。そこで一般的に最も効率が良いと言われるライン生産方法を、Linn工場の一角に準備しました。しかしライン製造では、日増しに高まるユーザーの需要とアイバー氏自らの要望に応えることが出来ませんでした。

アイバー氏は必ず解決策があるはずと考え、LINN技術陣を集め、どんな方法があるか皆んなで考案するために、まずは一台完成した製品を用意して欲しいと頼みました。アイバー氏はその一台が完成するまである程度の時間がかかると思って待っていると、生産責任者である女性はあっという間に完成させて戻ってきたのです。これに驚いたアイバー氏は、「どうやったらそんなに早く組み立てられるんだ?」と聞きました。その女性は、「私一人で組み立てたんです。」と答えます。ゼロからたった一人で、しかも最速のスピードで造られた完璧なターンテーブルを見たアイバー氏は驚嘆し、常識は必ずしも正しくないという事を発見しました。つまり、Linnの職人達に、原材料や工具、測定機など必要なものを全て提供し、彼らを最適なポジションに配置できたら、生産ラインで作るよりも断然早く、質の高い製品が仕上がるということが分かったのです。

それ以来アイバー氏はこの製造方法を「シングルステージビルド」と名付け、LINNのビジネスの核となりました。Linn製品は、その一つひとつがグラスゴー郊外の工場で熟練した職人の手によって組み立てられ、製作者本人のサインが入ることで完成します。こうすることで、製品の完成度に関してそれぞれが責任と誇りを持つことができるといいます。Linn社は今もなお、全てのLinn製品に組み立てたスタッフの名前を記入し続けています。

 

LINN SONDEK CD12の誕生

LP12でスタートした後、リンはアンプやスピーカーの開発にも積極的に取り組み、1990年代にはCDトランスポートやDAコンバーターなどデジタルコンポーネントにおいても高い評価を獲得しました。ソース機器からスピーカーまで自社製品で全てのシステムを築き上げた時、リンは理想とするホームオーディオの姿を明確にしました。それは、生活空間に干渉しないコンパクトなサイズであり、1998年に登場したSONDEK CD12などに見られるように、極限まで洗練されたデザインが今日までリンの強い独自性として継承されています。

SONDEK CD12

SONDEK CD12は1998年に25周年を記念してLP12のデジタル版をコンセプトに製品ラインナップに加わり、2004年頃にかけて生産されたLINNのオンリーワンとなるハイエンドCDプレーヤーです。

洗練を極めたアルミ削り出しシャーシにスタジオD/A機を搭載したCD12の当時の販売価格は、なんと約300万円!ベテランのオーディオファイルであればそう驚くことはないかもしれませんが、一般的に考えると並外れた価格です。

それ以上に驚嘆するのが、製造やメーカー修理が終了した現在でも、健在して多くのオーディオファンを魅了しているということ。いったい、CD12はどんな魅力を持っているのでしょうか?

CD12はなぜこれ程のユーザーを魅きつけるのか?

CD12はLINN社がネットワークオーディオに移行した為、2007年頃に製造が終了し、現在はメーカー修理も終了していますが、今でもCDプレイヤーとしては音源を忠実に再現するとされ高い人気を誇るモデルです。そんなCD12ですが、何がそこまで多くのユーザーを魅了しているのでしょうか。

まず1つ目は洗練された外観デザインです。究極のデジタルオーディオを目指して開発されたCD12は、フロント部の操作ボタンやスイッチの一切を取り除いてシンプルさを追求しています。本体で操作できるのはトレイのみで、タッチする事で開封が可能となっています。

そして2つ目はLINNがネットワークオーディオに移行してCDプレーヤーの生産を総て中止したことによる希少性が高まったことです。結果的に中古市場での買取価格の水準も維持することになっています。

最後に3つ目は音質です。古くても色褪せないサウンドは、生々しく透き通った魅力があります。造り手の思い入れが強く表れるような設計と高品質な部品で組み立てられたCD12は、そのデザインとサウンドにブランドの核心のような魅力が宿っているのでしょう。

CD12の初期・中期・後期の違い

ご存知の方も多いかと思いますが、CD12は製造時期によって仕様が異なります。

初期はMK1でD/Aコンバーターにバーブラウンのチップが入った20bit。
中期はMK1からマイナーチェンジしたMK2で、24bitDACに改良され、シリアルが3桁台となっています。
後期は限定最終モデルとなったMK3で、シリアルは6桁台です。

CD12の特徴と主な仕様

SONDEK CD12の特徴として、まずメカニズム部のピックアップは、シャーシからもブラシレススピンドルモーターからも完全にフローティングされており、振動の影響を取り除いています。また、磁力式ディスククランプを採用しており、CDと同じマテリアルを使用した接合部でディスクを支えることで過剰な応力やレゾナンスが加わるのを阻止しています。

ピックアップの動作は超高速DSPによるデジタルサーボで抑制しています。この超高速DSPはCD12のためにLINNが新たに自社開発したものです。これにより、ディスクの偏りや面ブレにもハイスピードアクセスが可能となり、反りが発生したディスクでも高い音質を獲得しています。このメカニズムはアルミ引き抜き素材を用いたハウジングに納められ、シャーシにしっかりと固定されています。

ケースとリッドには高張力アルミ合金ブロックの高精度削り出し品を使用し、さらに約70ミクロン厚の非常に強硬なアルマイト層が採用されています。マイクロフォニックノイズの発生は、このシャーシにCDエンジンと回路基板を頑丈に固定することで制御しています。また、アルミブロック削り出しのインシュレーターが脚部にも採用されています。

CD操作に関しては、リモコン操作だけでなくCDトレイに直接タッチする独自のスマートドロワーでも行うことが出来ます。

D/A変換部においては、リン独自の4Dジッタレス回路を採用しています。4Dジッタレス回路では、CD自体に含まれるジッタを可能な限り除去した後、DAC回路に伝送されています。

最後に電源部にはブリリアント電源が導入されています。この電源では小型コンデンサで平滑化するまでに、1次AC電源を高圧のDCに変換した後、高周波AC変換、減圧、超高速整流器によるDC再変換という過程を経ています。これにより従来の電源では達成できなかった低ノイズ化や供給電源の変動や負荷に影響されない安定的な電源供給を実現しています。電源出力は合わせて14段ある回路ブロックに対しそれぞれ最適化して供給しています。

『SONDEK CD12 主な仕様』
●型式:CDプレイヤー
●音声出力レベル:2Vrms(ピークコード/アンバランス時において)
●音声出力端子:
RCAフォノ:2系統
XLR(2番ホット):1系統
●デジタル出力:
SPDIF(BNC)
AES/EBU
TOSLINK
ST
●外形サイズ:320mm(幅)x 80mm(高さ)x 350mm(奥行)
●重さ:12kg

LINN社の歴史

画像引用元:Mr Vinyl

オリジナルレーベルの創設

1982年、リンは独自レーベルを発足し、音源の製作にも取り組みます。アイバー氏は、どう音楽が生み出され、録音されるのか、そして音楽家と指揮者、エンジニア、プロデューサー、録音機器などの関わり等々、レコード制作全域にわたって深く理解することがLinnにとって大きな冥利となると考えたのです。

Linnレコーズはレコーディング・テクノロジーの限界を成しうる限り拡大していきました。1990年までに、デジタル技術を使ってCDをはるかに超越するクオリティの録音を始めます。そしてついに2007年、Linnレコーズは世界で初めてスタジオマスター音源のダウンロード販売をDRMフリーで行うレーベルとなりました。

この時代、ほとんどのデジタルミュージックは音質よりもデータサイズの小型化を重視しており、CDに比べて非常に劣等な音楽データが広まっていました。そこで再び、Linnは世の中の常識を覆します。Linnレコーズは、CDをずっと上回る高音質を目指してデジタルテクノロジーを用いたのです。

Klimax DSの誕生

LINNは、近いうちにインターネット回線の転送速度や安定性が全てのご家庭にスタジオマスター音源を伝送するのに充分となることを確信していました。そしてその未来に活躍する製品の開発に着手し、完成したのがKlimax DSです。CDプレーヤーはCDを再生することを専門としますが、Klimax DSでの音楽は自宅のネットワークを利用してインターネット通信で届きます。こうして音楽は物理的手段から解放されることとなりました。

このようにハイファイ再生のメディアがレコードからCD、そしてハイレゾへと進化する過程で、初期のアイバー氏の判断は正しかったことが明らかになりました。リンはハイレゾ配信の先駆者となり、他社に先立って発売したネットワークプレーヤーの価値を立証したのです。

CDプレーヤーの製造を終了

Klimax DSが完成したころ、LINNチームはKlimax DSの優れた音質を実証するため各国を飛び回り、世界中のCDプレーヤー達と比較しました。そんな時、当時技術部門のトップであったアイバー氏の息子ギラード氏は、ある催しで一人の男性にこんな質問をされました。「これほどKlimax DSのサウンドが良く、音楽の未来がストリーミングによるデジタルオーディオにあるのなら、もうCDプレーヤーを買う必要はないですよね?」この質問を受けてギラード氏はLINN本社に帰り、劇的な決断をします。それは歴史的なCDプレーヤーであるCD12を含み、CDプレーヤーの生産を終了するという事でした。ギラード氏は「デジタルストリーミングこそ未来である」というシンプルで明白なメッセージをユーザーに示すという意図がありました。

DSの成功

Hi-Fi業界全体に衝撃を与えたLINNCDプレーヤー製造終了は、明らかな方向性ではあるものの、売上げ減少のリスクが懸念されていました。しかしギラード氏のメッセージはLINNユーザーと呼応し、急速に新しいテクノロジーが受け入れられていきました。2年も経たず、Klimax DSと新たに追加されたDSファミリーの売上げは、これまでのCDプレーヤーの売上げをはるかに上回ったのです。

またSONDEK LP12と同様にLINN DSは、現在の最新技術であるというだけでなく、ソフトウェアをアップグレードしていくというDSならではの長所によって、新フォーマットへの対応、新機能の追加、継続する性能向上といった改善を全てのオーナーに向けて提供しています。

現在のデジタルストリーム時代へ

LINNが培ったデジタルオーディオの知識に最新のネットワークテクノロジーを統合して生まれた製品が、現在のLINNの主柱となるDS/DSMシリーズとEXAKTシステムです。

LINNは一貫してデジタル・ストリーミング再生の利点を追求し、ディスク再生では到達できない忠実度の優れた再生音を目指しています。このベースとなる概念は2007年に発売されたKLIMAX DSからオールインワンのワイヤレススピーカーのSeries3、そして最新のKLIMAX DSMまで、貫徹して継承されています。

そもそもDSとはデジタル・ストリームの略で、LINNKLIMAX DSAKURATE DSMAJIK DSという3つのシリーズを登場させた当初は、再生システムの入口となるソース機器の位置付けでした。
しかしその後、アンプを内蔵したDSMがそれぞれのシリーズに追加され、DSDSMのモデルが展開されます。
そして現在は、全モデルがDSMに移行しています。レコードプレーヤーやその他のソース機器も含めてプリアンプ機能を持つDSMに信号を入力し、その後の処理は各システム構成に沿って、いくつかのオプションを揃えるという方向へ転換しています。これを受けて、DSMは従来のディスクプレーヤーに代わるだけでなく、新ジャンルのコンポーネントとしてこれまで以上の役割を果たすことになるでしょう。

 

NEW KLIMAX DSM

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

新たに誕生したKlimax DSMは、半世紀にわたりオーディオを革新してきたLINN独自の知見と最新技術を結集させ、ストリーミング・オーディオの完成形と評されるほど極みに達した至高品です。

Klimax DSMは全く新たに設計されました。特別グレードのアルミブロックから精密切削加工によって仕上げられた筐体は、視覚的・触覚的なラグジュアリー感を備えています。さらに製品内部の繊細なエレクトロニクスを独立配置し、圧倒的なパフォーマンスを実現。加えてエレクトロニクスは、適切な質量と高剛性、内部の効果的なダンピングによって、設置環境から生まれる振動の影響からしっかりと守られています。

Klimax DSMのサウンドは、LINN史上初となる完全オリジナル設計のD/A コンバータを搭載し、比類ない極めてナチュラルでリアルな音質を獲得しています。自社設計・製造で完成したOrganik (オーガニック) DACは、FPGA とディスクリート構成のコンバージョン段を組み合わせ、デジタルからアナログへ変換するすべての過程を担っています。Organik DACの貢献により、従来のどのLINN DACよりもノイズフロア、歪率が飛躍的に改善されており、LINNにとってOrganik DACは新時代製品の中核となるでしょう。

 

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

NEW KLIMAX DSMの主な特徴』
●Organik DAC
搭載によりこれまでの水準をはるかに超える自然なサウンドを獲得
●2
タイプのラインナップ
①音楽ソース中心の「Audio
HDMI端子を装備し映画や音楽も楽しめる「AV
あらゆるデジタルソースを標準的なネットワークでストリーミングすることが可能
●384KHz 24bit
DSD256もサポート
●Tidal
Qobuzのロスレスストリーミングに対応
●TuneIn
Calm Radio経由のインターネットラジオの再生
アナログ、デジタル入力に加え、ワイヤレス接続時も高いパフォーマンスを発揮
●eARCHDMI2.0
4K/スマートTVeARC)をサポート
超低歪みA/Dコンバージョンによりアナログソースの潜在能力も余すところ無く抽出
●LP12/URIKA
EXAKTBOXEXAKTスピーカーと結合するEXAKT LINKを装備
歪、連動誤差を発生させないデジタル音量調整
サラウンドプロセシング・モジュールを搭載可能(‘AV’モデル)
●Space Optimisation / Account Space Optimisation
に対応

 

まとめ

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

LP12という伝説的レコードプレーヤーから始まったLINNは、デジタル・ストリーミングの先駆者となり、いまも時代を牽引するトップランナーであり続けています。LP12はまもなく誕生から50年を迎えますが、その他にもDSMやEXAKTなどネットワークオーディオ製品もロングランモデルが多く、10年以上経過していてもなお、アップグレード対応で最先端技術を受け取り、最新モデルと肩を並べる高性能と機能を獲得しています。このようにアナログとデジタルの両方の分野で革新性と持続性をユーザーに提供し続けるLINNは特別な存在ですね。

創業者のアイバー・ティーフェンブルン氏は、現在LINN社をギラード氏と彼のチームに託し、日々の経営からは離れています。しかし会長としていまも会社に在籍しています。

LINN製品の「高価買取」はオーディオランドにご相談ください!

画像引用元:LINN公式ウェブサイト

オーディオランドでは、CD12の「MK1」、「MK2」、「MK3」まで全て高価買取させていただきます。CD12は現在メーカー修理も終了していますが、今でも優れた音質を有するCDプレイヤーとして中古市場でも高い人気がありますので、買取をご検討されている方は是非査定だけでもご依頼ください。もちろん、現行モデルの買取も高額査定でご対応させていただきます。
また、お手元のオーディオ機器やリモコンの動作に不具合がある状態でも大丈夫です。オーディオランドでは自社専門スタッフによる熟練の技術と知識で「修理・メンテナンス」を行い、次のオーナー様に橋渡しをさせていただきます。

技術スタッフによるメンテナンスの様子は「こちら」のブログをご覧ください。
また、LINNの買取実績は「こちら」からご覧いただけます。

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