オーディオで重要なのは低音?高音?音域の特徴に注目!
オーディオにおける「いい音」とは、どんな音を指すでしょうか。
テクニカルな視点では「ノイズが少ない」、「ダイナミックレンジが広い」といった言い方があります。
オーディオでいうダイナミックレンジは、そのオーディオの表現可能な音の強弱の幅ですが、音の良し悪しを考慮するうえで重要な概念です。
どの音域もバランスが取れた繊細さを感じられるのがいい音、何かひとつが飛び抜けておもしろい響きがいい音、いい音に正解はありません。
人にとやかく言われようが自分の音が世界で一番可愛い音!心の奥で思っているオーディオマニアの方も少なくないと思います^^
ただ、様々なオーディオを視聴しているとダイナミックレンジは広いのにどこか違和感を感じるときがあります。
数値的には高音質を実現しているはずなのに、演奏ののびやかさが感じられず、高音と低音の輪郭がクリアすぎて逆につくりもののような感じ、、、
考えられる要因としては本来の音楽のハーモニーと再生される音との間に何らかの歪みが入っているということです。
ひたすらクリアな音を追求するのも良いですが、それだけに終始せず音楽に込められた想いや感動を十分に伝えてくれる音を追求したいものです。
この記事では音の本質的・構造的なこと、それを活かしたオーディオの楽しみ方をお話させていただきます。
目次
そもそも音とは?科学的な視点から…
オーディオ機器を選ぶうえで参考になるのは、魅力的なスペック説明や口コミもそうですが、実際に視聴すること、好き嫌いのフィーリングも大きいと思います。
さらに普遍的な音の性質を考慮した判断ができるとより後悔しない選択ができます。
「守・破・離」とはよくいったもので、基本があるから形を外して追求したり遊んだりするおもしろさを感じることができます。
音の基本や人間の音の捉え方を知ると、また違った視点でオーディオと向き合うことができますよ。
音とは空気の圧力変化
例えば、太鼓を叩くと音がしますよね。
ほんのわずかではありますが、太鼓の膜がバネのようにビヨヨーンと震える運動を繰り替えて振動しています。
この振動から空気の圧力変化が生じ、放射状に振動が伝わっていきます。
このときの振動が音になります。
音は空気を媒体にして伝わっていきますので、空気の無い真空状態では聞こえなくなります。
この空気の圧力変化が私たちの耳に伝えられて音として認識されるのです。
楽器はすべて何らかの形で空気を振動させることで音を奏でています。
オーディオのスピーカーはよく楽器と例えられますが、太鼓のように中が空洞になっていて伝えられた電気信号に合わせて空気を振動させて音を出しているので原理は楽器と同じなんですね。
また、慣らし運転や使い込むことによって音が馴染んでくる点からも、スピーカーは繊細な楽器と言えます。
純音・複合音・ノイズ
日常には色々な種類の音がありますが、その中で最もシンプルな音が「純音」です。
規則的な波形の振動をしており、純音は音の素粒子のようなものです。
純音は楽器や日常の音にはほとんど存在しませんが、テレビやラジオの時報に使われるピー音や楽器のチューニングで使われる音叉の音などが純音にあたります。
私たちの発する声や楽器の音はひとつの音ではなく、この純音が複数足し合わさってできているのです。
純音が重なって聞こえる日常の音を「複合音」と言います。
複雑な波形の複合音を分解すると純音になります。
一方、オーディオでも敬遠される「ノイズ(雑音)」も音の種類の一つです。
ノイズの波形は全くランダムで無秩序な波形です。
新しいオーディオを購入したときに、高音域や低音域を慣らすエージングとして長時間音を流しっぱなしにするときホワイトノイズやピンクノイズで調整される方もいらっしゃると思います。
ホワイトノイズは全ての周波数帯域においてエネルギーが同じ強さの雑音です。
ピンクノイズとはホワイトノイズに-3dB/oct のLPFを通したもので音の高さ(周波数)と反比例した雑音です。
高音になるにつれて音が小さくなるので音の測定によく使われます。
しかしこのノイズは、音楽を豊かにする要素でもあるのです。
バンド音楽のGAIN(歪み)はイメージしやすいですが、20世紀になると作曲家達はノイズを音楽の素材として積極的に取り入れてきました。
また、多くの楽器にも微量にノイズは含まれています。この僅かなノイズが無いと楽器独特の味わいが損なわれるそうです。
高音と低音それぞれの特徴
高音は真っ直ぐに直進する性質を持っています。
一方、低音は水面の波紋のように360度に広がる性質を持っています。
例えば、比較的に中高音の救急車などのサイレンは聞こえる音は方向によって音色が変わってきますよね。
クラブハウスの近くにいくと低音だけドスンドスンと感じられる現象はこのような音域の性質が影響しています。
そして、音域によって音が伝わる速さは変化します。
音速は高音につれて速くなり、低音になるほど遅くなります。
花火をイメージするとわかりやすいですね。
ヒューっと花火が登っていく音に対し、かなり遅れてドンという爆発音(低音)が聞こえます。
人間が音を認識する仕組み
ではこれらの音を人間はどのようなメカニズムで捉えるのでしょうか。
耳の仕組みから辿っていくと、まず耳たぶで空気の振動がかき集められます。
次に耳の穴(外耳道)を通じて鼓膜に振動が到達し、その振動は耳小骨と言われる耳の骨を伝わって渦巻状の器官(蝸牛)から聴神経→脳へと伝わります。
簡易的な説明になりますが、私たちの耳はこれだけの工程を経てやっと音を脳内で認識することができるのです。
オーディオもですが、音を扱う耳はすごく繊細な感覚気管ということがわかります。
周波数によって聞こえ方が変わる!等ラウドネス曲線
そして人間の聴覚は特定の周波数のみを通すフィルター機能を持っているので、音の高い低い、さらには和音を聞き分けることができます。
実は人間の聴覚は周波数によくい聞こえる音と聞こえにくい音の優位性があり、音の性質によって聞こえ方が変わってきます。
人間が聞き取ることのできる周波数は20Hz〜20,000Hzと言われていますが、音の大きさにも依存します。
体感的にもわかると思いますが、高い音は小さな音でも聞こえやすいのに対して、音を大きくしないと聞こえにくい周波数帯もあります。
それを示すのが下記の「等ラウドネス曲線」です。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より画像引用
音量を変えると音色が変わってくるのは、この等ラウドネス曲線によるものです。
適当な音量で豊かに鳴り響いていたオーケストラの曲のボリュームを下げると、途端に貧弱な音になるのは、オーディオ機器のせいではなく私たちの耳の仕組みの問題だったのです。
それを補う「ラウドネス」という機能がついているオーディオ機器もあります。
音量によって私たちの耳に届きやすいように高音域、低音域を強調して補ってくれるのです。
ラウドネス機能である程度は音色を一定に保つことができます。
音が音を制す?マスキング効果
賑やかな飲食店で周りの声がうるさく会話が聞こえにくくなることがあります。
このように音が別の音を聞こえにくする現象を「マスキング」といいます。
マスキングは聞きたい音と妨害する音の周波数が近ければ近いほど効果は大きく、つまり聞こえにくくなります。
また若干ではありますが、低い音が高い音をマスキングする効果は、高い音が低い音をマスキングするよりも効果が高いです。
オーディオでも低音を抑えると今まで聞こえなかった中音域・高音域の音が瑞々しく聞こえることがあります。
オーケストラをバックに歌うオペラ歌手やメタルバンドをリードするボーカルは、このマスキングに打ち勝つパワーを持たなくてはならないのです。
聴きたい音を選んで聴くカクテルパーティー効果
マスキングとあわせて触れておきたいのが、マスキングと逆行する人体の仕組み「カクテルパーティー効果」です。
少々周りが騒々しくても、人間は聞きたいと思った音を選択的に聞き取る能力を持っているのです。
例えばパーティーで気になる異性の声はよく聞こえたり、クラシックでバイオリンのソロは小さな音でもよく聞こえるのは無意識のうちに私たちが集中して聞き分けているからです。
カクテルパーティー効果で聞き分けやすいパターンは、聞きたい音と妨害音が違う方向から入ってくるときや、聞きたい音と妨害音の変化のパターンが異なっている場合です。
人間の聴覚は背景の音から聞きたい音を浮かび上がらせて情緒的に聞くことができるのです。
音の方法性
人間の耳は音がどこからやってくるのか聞き分ける能力を持っています。
大体の動物は耳を2つ持っていますが、左右に音が伝わる繊細な時間差と強度でどこから音が伝わってきているのか判断しているのです。
つまり、音が先に来る方向、音が強い方向から音がするとわずかな差を感知しています。
ちなみに自分の前後や正面の左右均等な位置から伝わる音は、音域によってよく聞こえる音も変わってくるみたいです。
また、視覚的な要素も音の聞こえ方には影響があります。
映画などで主人公が話しているとき、実際の音は横のスピーカーから出ているのに正面から聞こえるように錯覚します。
高音・中音・低音の特徴を活かしたオーディオ体験を!
初心者でも聞き比べやすいのは中音域
ヴォーカルの歌声は一般的に300~3000Hzの中音域で、ここは人間が聞こえやすい音域であり、音楽の中核を担う濃厚な音域です。
この中音域をスピーカーがどのように表現しているかヴォーカル基準に聴き比べるとわかりやすいです。
ソプラノの声が伸びやかに聞こえるか、テノールの厚み、変な癖や歪みはないか、人間の感覚は曖昧なのでポイントを抑えてリスニングメモをつけることはプロもしている聞き比べ方です。
中音域のヴォーカルの再現性は、温かみのある音色なのか、クリアな透明感のある音色なのか、そのオーディオセットの目指すものを感じとることができる大切な部分です。
クラシック好きの方はヴァイオリンやピアノの聞こえ方に注意しましょう。
ヴァイオリンはすーっと伸びやかなサウンド、ピアノは叩いて音が出るサウンドです。
この2つがそれぞれ自然な音で聞こえるか、調和しているかはスピーカーの特徴が出てきます。
スピーカーユニットの設計思想
スピーカーを思い浮かべると大小複数のユニットを持ったものが多いですね。
広い音域に対応するために高音、中音、低音といくつかに音域を分けて、それぞれ専門の音を出しています。
低音のユニットは「ウーファー」、中音のユニットは「スコーカー」、高音のユニットは「ツィーター」です。
このように複数のユニットを持つスピーカーを「マルチウェイ型」といいます。
このマルチウェイ型は各メーカーごとにスピーカーの設計思想が色濃く出ているおもしろい部分です。
2ウェイ派、3ウェイ派、統一感を持っているメーカーが多く、中には4ウェイや5ウェイの複雑なユニットを採用しているメーカーもあります。
また2ウェイ派の世界にも普通に高音と低音で真っ二つに別れているのではなく、「低音域に強いスーパーウーファー+中音域までのミッドバス+中高音域のツィーター」のように音域の境目もスピーカーにより違います。
ユニットの数が多いほど扱いや使いこなしは複雑になってきます。
音が伝わる速さは高音と低音で異なるからです。
ユニットはそれぞれの音域を切り取って出力しているので、音の伝わるタイミングがずれるとチグハグして音の繋がりが損なわれます。
スピーカーを選びにおいてユニットの設計思想を知って、自分の部屋に合ったスピーカーを選ぶのは大切なポイントです。
高音と低音が重なるリスニングスポットはここだ
ステレオのポジションは音の臨場感や広がりを左右します。
音がよく聞こえる特等席は、左右のステレオ方向からの中心、つまり三角形の頂点です。
最初に自分が音を聞く位置を決めて、それに合わせてステレオを三角形に配置します。
スピーカーの向きはとりあえず正面でもOKです。
これはベーシックな「オルソン方式」という配置になります。
自分の聞いている位置が中心から左右どちらかに偏ると、音量バランスがずれて歪んだステレオサウンドになってしまいます。
このオルソン方式はレコーディングやライブコンサートなど音楽のプロエンジニアが昔から音に向き合ってきた場所です。
直線的な音の広がりをする高音の芯と、同心円状に広がる低音が重なり合う重要な位置で、それぞれの音域の音の広がり方をバランス良く感じることができます。
少しずつスピーカーの距離や角度を調整してベストポジションを見つけてください。
BGMとして音楽を楽しみたい場合は、オルソン方式の逆にハの字に開いて反響を楽しむのも手です。
吸音と配置で音域を調整するテクニック
オーディオを楽しむマナーは吸音・防音です。
吸音は防御的な意味で消極的に捉えられがちですが、やり方次第で狙った音に近づけることができる攻めの面も持っています。
例えば本棚にすっぽり収まるようなブックシェルフ型の小型スピーカーであれば、壁の近くに配置したり、床に直置きすると低音を増強することができます。
但し、周りに迷惑をかけないように遮音対策もしっかりしましょう。
逆に高音がきついと感じる場合は、スピーカーの前に何か物を置いてみるとまた違ってきます。
部屋をあえて片付けずに凸凹な反響のある環境は大ホールの響きを演出してくれます。
すべての音域ですっきりとバランス良く音を楽しみたい場合は、オーディオを床に直置きせずに小さなものでスピーカーを支え床とスピーカーの間に空間を作る方法がおすすめです。
スピーカーに対する余計な振動の影響を抑えることができます。
極論、宙にスピーカーが浮いている状態がベストですがそれはできないので、床とスピーカーの間に専用のインシュレーターやコインでもなんでもいいので色々な素材で試してみるとおもしろいです。
まとめ
いかがだったでしょうか、音そのものや人間の持つ聴覚や音域の持つ性質を活かせば、より豊かな音楽体験が実現できると思います。
よい音は1日にしてならず!リスナー側の努力次第で作り手の音をより正確に受け取ることができます。
オーディオランドのスタッフもオーディオ機器の魅力を120%引き出せるよう、修理・改善や情報収集・研究を日々重ねております。
特に出張買取に伺うと何かしら新しい発見をオーナー様からいただきオーディオの世界の奥深さを感じます。
そのような想いを買取価格に還元できるよう今日も頑張りますよー!