トーンアームで有名なSMEが開発した最高峰のフォノイコライザーSPA-1HLを買取しましたのでご紹介します。
ここで説明するまでもないですがトーンアームとはカートリッジと組み合わせ、レコード盤に刻まれた音声信号を読み取るシステムで、昔はその名のとおりピックアップシステムなんて呼ばれていた時代もあるそうですね。メーカーに関しましても主要オーディオメーカーはじめ、GRACEやMICRO、FR(Fidelity Research)、SAEC、IKEDA、Dynavector他などの選択肢があります。
なかでも馴染みがあるメーカーの一つがイギリスのSME社ではないでしょうか。SMEはリミテッドモデルやカーボン仕様などを含めると多数の仕様がありオーディオファンが愛用しています。
今回はそのSME社が開発、販売した最高峰のフォノイコライザーアンプ「SPA-1HL」を買取させて頂いたのでご紹介させていただきたいと思います。
目次
SME社の歴史
画像引用元:SME公式ページ
SMEは、英国で1959年にアラステア・ロバートソン・エイクマン氏により設立された、ユニバーサル型トーンアームで高名なメーカーです。SMEは社名の「Scale Model Equipment Compny Limited」の頭文字で、当初はスケールモデル機器会社として模型製造業向けの精密模型の設計・製作等を行なっていました。
1950年には、ロールス・ロイスやホーカー、マーティン・ベイカーなどの一流企業向けに精密な航空機部品を生産し、エンジニアリングの下請け事業へと拡大しました。
1959年、アラステア・ロバートソン・エイクマン氏は、Hi-Fiシステム向けのピックアップアームをデザインし、オーディオ業界の友人にプロトタイプを見せ、それを商業生産することを提案しました。彼の情熱的な取り組みは高く評価され、需要に応えるために新しい工場が建設されました。また、新しい事業活動に合わせて会社名も「SME Limited」に変更されました。
画像引用元:SME公式ページ
1960年には、航空機、原子力、潜水艦産業向けに精密に製造された部品の開発をスタートしました。この取り組みには航空計器や事務機に関連する新規プロジェクトも含まれています。
1962年に「シリーズ II 9インチ ピックアップアーム」と「12インチ ピックアップアーム」を、1972年に「シリーズ II IMP 9 インチ ピックアップアーム」を、1977年に「シリーズ III」と「シリーズ IIIS」のピックアップアームを、1980年に「シリーズ II R タイプ 9 インチ」、「10 インチ」、「12 インチ」ピックアップアームを、1986年に「シリーズ V ピックアップアーム」を、1987年に「シリーズ IV ピックアップアーム」を、1988年に「シリーズ 300 ピックアップアーム」を発売しました。
代理店においては、1970年頃はシュリロ貿易が、1978年~79年頃はハーマン・インターナショナル・インダストリーが務めていました。米国ではShure(シュアー)が販売元になった時期があり、その頃の製品はShure/SMEの名前で販売されていました。
画像引用元:SME公式ページ
1990年、SME プレシジョン エンジニアリングの専門知識と技術は大きな功績を挙げ、その結果、ロールスロイス モーター カーズ、ブリティッシュ オキシジェン カンパニー、パーカー ペン、フォード モーター、ウィリアムズ モータースポーツ、フィリップス メディカルなど、英国屈指の企業との間で新しい作業プログラムがスタートしました。
1991年に「モデル 30 ターンテーブル」を、1992年に「モデル 20 ターンテーブル」を、1999年に「モデル 10 ターンテーブル」を発売しました。
画像引用元:SME公式ページ
2000年には、CNC機械加工、圧力ダイカスト、射出成形、金属仕上げ、電気メッキ、陽極酸化処理への予算を増大させ、SMEのサービスを強化しました。
2006年に「モデル 20/12 ターンテーブル」を、2008年に「モデル 30/12 ターンテーブル」を、2015年に「モデル 15 ターンテーブル」を発売しました。また、2010年には航空宇宙、F1、医療機器産業向けに、新たな世代の精密エンジニアリング・プログラムが立ち上げられました。
2016年、SMEはCadence Audio Group of Companiesのメンバーとなりました。SMEは70年にわたる卓越したエンジニアリングを誇り、現在では世界最大級かつ最高級の設備を備えたオーディオ会社として、精密にデザインされたピックアップアームとターンテーブルの製造に取り組んでいます。
2017年、SMEプレシジョン エンジニアリングは、航空宇宙、F1、自動車、医療機器などの産業エリア用に、ハイレベルで高品質の精密加工コンポーネントの製造で選ばれる会社に成長することを目標に再び歩み始めました。
2018年、SMEはステニング工場への大規模な投資計画を策定し、最先端のプラント、機械、設備を導入しました。そして同年、革新的な一体型ターンテーブル「Synergy」発売しました。この高い性能と精度を誇るターンテーブルには、フォノステージや最適なカートリッジを装備したマグネシウムトーンアーム、さらにクリスタルケーブルが内蔵されています。
SMEの親会社、Cadence Audio は英国の著名なターンテーブルメーカーであるGarrardオーディオブランドを買収し、GarrardはSMEの下で「Revival 301」を導入して復活を果たしました。そしてGarrardは最終的に全く新しい世代のオリジナルターンテーブルの開発に着手します。
2019年、SMEは高い評価を得ている「SME 309トーンアーム」をパッケージ化し、Crystal Cableを装備した新たな高精度ターンテーブル「モデル 12A」を発売し、素晴らしいレビューを獲得しました。
また、新しい「Garrard 301 ターンテーブル」も発売されました。このターンテーブルは洗練された絶縁システム、SME M2-12Rトーンアーム、Crystal Cable内部配線を装備したウォールナット無垢材の台座という個性豊かなパッケージです。
さらに「Synergy」はWhat HiFi?で高く評価され、テンプテーション賞を受賞しました。
最後に、ユニバーサル型のコネクターはオルトフォンが原型ですが、市場拡大に貢献したのはSMEだといわれています。SMEの代表作は芸術作品のような優雅さを醸し出す9インチ/12インチクラスのアーム、「3009/3012シリーズ」ですが、一方アナログ時代終焉の頃に発売されたアーム、「Series Ⅴ」以降は要塞砲のようなデザインとなりました。またアーム以外では大変拘った設計の管球式のフォノイコライザーアンプやアナログディスクプレーヤーなどもありました。
トーンアームの沿革
トーンアームは、レコード針(カートリッジ)を先端に装着し、レコード盤の音溝に刻まれた音声信号を読み取るための装置です。以前はトーンアームとカートリッジが一体化しており、先述したようにピックアップ・システムと呼ばれる時代もありました。ですから1960年代頃までに誕生したトーンアームは、特定のカートリッジを想定して設計され、そのカートリッジとの組み合わせで最適な性能を発揮するようになっていました。
例として挙げられるのは、オルトフォンの「RMG-309 トーンアーム」です。このRMG/RMAシリーズは、当初は放送局やレコード会社向けの再生を想定していた為、SPUなどのユニットが納められたGタイプ(→RMG)またはAタイプ(→RMA)のヘッドシェルのみに対応したデザインでした。
したがって、現在多くのレコード愛好家が行うように、様々なカートリッジを交換して楽しむということが出来ません。RMG/RMAシリーズは、SPUなどと一緒に単一のピックアップ・システムとして使用するものと認識しておく製品です。
しかし、オーディオ文化の発展とともに様々なカートリッジが登場しました。そしてレコード愛好家たちは複数のカートリッジを所有し、異なる音色を楽しむことが主流になってきました。この変化に合わせて、現在ではトーンアームの仕様もカートリッジの交換を考慮したデザインが一般的になっています。
ユニバーサル型トーンアーム
トーンアームの話になると、「ユニバーサル型」というワードがよく出てくるかと思います。ユニバーサル型とは、ヘッドシェルの後端とトーンアームの先端にコネクターを備え、アーム側のコネクターを回転させることで容易にカートリッジを交換できるタイプのことです。このようなコネクターを「ユニバーサル型コネクター」と呼び、これに対応しているトーンアームは「ユニバーサル型トーンアーム」として知られています。
ユニバーサル型コネクターは、オルトフォンの「G/Aタイプヘッドシェル」やSMEの「3009/3012シリーズ」を起源として、世界中に広く普及しました。今では「Technics SL-1200シリーズ」を代表に、多くのレコードプレーヤーには、付属品としてユニバーサル型のトーンアームが取り付けられています。さらに、これらのトーンアームには互換性を持つヘッドシェルが存在し、さまざまなカートリッジの交換が可能となっています。これにより個々のカートリッジの音色を楽しむことができ、レコード再生の面白味を存分に味わうことができます。
ユニバーサル型以外のトーンアーム
ユニバーサル型以外では、ヘッドシェル部分とアームパイプが一体化したモデルが代表例です。これらの製品には、シェルのリード線とアームパイプ内部のインナーワイヤーが一体化しているものがあり、カートリッジからフォノケーブルへの信号伝送が最小限の接点で行えます。ただしヘッドシェル部分の切り離しが出来ないモデルは、一度カートリッジを装着すると交換が難しくなりますので、トーンアームとカートリッジの組み合わせは比較的固定される傾向があります。
また、ユニバーサル型コネクターの使用が想定された「SPUシリーズ」や「Concordeシリーズ」は、これらの一体型アームで使用することができません。この為、一体型アームでこれらのシリーズを使用する場合は、ユニバーサル型コネクターを必要としない「SPU Royal N」や「OMシリーズ」などのカートリッジがおすすめです。
当社のブログでは、トーンアームの基礎知識やアームの長さ、S字についても解説していますので、よろしければ下記のブログをご覧ください。
「トーンアームのお話、ショート、ロングはたまたS字で音の変化はどうなるのか?」
また、「カートリッジ」に関しては下記のブログでご紹介しております。
「カートリッジの MM/MCって?昇圧トランスってどんなもの?」
SPA-1HLのご紹介
「SPA-1HL」は、SMEがトーンアーム以後の最大部分であるフォノイコライザーに焦点を当てて開発したフォノイコライザーアンプです。
増幅素子には、音質と特性に優れた双3極管「ECC83」と「ECC88」が採用されています。真空管はシンプルに電子の移動によって電流が流れるため、トランジスタのようなホールの移動に依存しない高速な信号伝送が可能です。このため、真空管は信号処理能力が高く、直線性にも優れています。また、真空管は大きなダイナミック・レベルを確保でき、抵抗や線材の影響を受けにくい特性も持っています。「ECC83」や「ECC88」は、マランツ モデル7などの名機でも採用されており、素晴らしい音質を提供します。
MCカートリッジのステップアップには、新たに開発された昇圧トランスが搭載されています。昇圧トランスはバランスタイプが採用されています。このトランスは、1次側巻線にセンタータップを設けてバランス受けとすることにより、ハムレベルを低く抑える効果があります。さらに、プレーヤーのリード線から入るノイズや、リード線の引き回しによる影響を除去するための対策も施されています。
シャーシはトランス部、アンプ部、電源部の3つのブロックに分割され、スペース的にも電気的にも独立した構造となっています。この構造により相互干渉による歪を取り除いています。
「SPA-1HL」では、一般的なプリント基板を使用せず、ワイヤー配線による基板を採用しています。これにより、回路自体での音質劣化を防止しています。基板は単なるリグ板として扱われ、ハンドワイヤーで配線が行われます。こうしてプリント基板による容量増加に伴う発振や、薄い銅箔による音質劣化の問題を回避しています。さらに、プリント基板で発生しがちなアースラインの複雑化も防いでいます。
SPA-1HLの仕様
●型式:フォノイコライザーアンプ
●外形寸法:410(W)x110(H)x285(D)mm
●重量:7kg
●歪(1kHz、1V):0.0067%以下
●ゲイン(1kHz):
Through:40.8dB
Mid:64.0dB
Low:75.8dB
●最大出力電圧:30V(1kHz、47kΩ負荷)
●電源:AC100V、50Hz/60Hz
●消費電力:50W
SPL-2HE
「SPL-2HE」は、「SPA-1HL」の開発の中で獲得した音質思想と回路理論を発展させて生み出されたコントロールアンプです。
このシステムでは、双三極管「ECC88」を増幅素子として採用しています。「ECC88」は高周波ノイズに対して強く、信号処理能力、直線性、ダイナミックレンジにおいても半導体に比較して優れた能力を保持しています。システムの設計はこの「ECC88」を核にデザインされ、非常にピュアな音質を獲得しています。
ボリュームコントロールには大変精密なアッテネーターを採用しています。このアッテネーターには銀接点の多段ロータリースイッチが用いられており、品質と信頼性の両面で選び抜かれた超精密抵抗が組み込まれています。これにより、左右のトラッキングエラーを最小限にし、音質は長期にわたって劣化しにくく安定した可変性能を実現しています。また、金接点ロータリースイッチと超精密抵抗を組み合わせた、左右独立のトリムコントロールによって、音質への影響が排除されています。
「SPL-2HE」には、新たに開発された6系統の入力セレクタースイッチが搭載されています。このセレクタースイッチは、入力端子のホット側とアース側を同時に切り替えることにより、選択した音楽ソース以外の接続を切り離します。これにより、他のデバイスから受ける音質への影響を防止することができます。
その他の特徴は、金メッキ端子が使用されている点や独立した3つのブロックから成るシャーシ構造が採用されている点、「SPA-1HL」と同様に音質劣化を防ぐために基板にハンドワイヤー配線が採用されている点、マグネティック・ディストーションを除去するためにシャーシに非磁性体シャーシを採用している点が挙げられます。
SPL-2HEの仕様
●型式:コントロールアンプ
●外形寸法:410(W)x110(H)x285(D)mm
●重量:7kg
●歪:0.04%以下(1kHz、1V)
●ゲイン:12dB(1kHz)
●最大出力電圧:20V(1kHz、47kΩ)
●電源:AC100V、50Hz/60Hz
●消費電力:50W
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