励磁(フィールドスピーカー)とは?スピーカーマグネットの歴史

アイキャッチ画像引用元:Stereo Sound ONLINE

フィールド型スピーカーというのをご存知でしょうか?励磁型とも言われるフィールド型は、電磁石を使用したスピーカーのことで、現在一般的に使用されている永久磁石が使用される以前に作られていたスピーカーに用いられた方法です。
その為、ダイナミック型、アルニコ型、フェライト型は知ってるけど、フィールド型は見たことがないという方も少なくないかと思います。フィールド型の最盛期は1930年代から40年代にかけてです。現在フィールド型を用いて作られたスピーカーは大変少なく、あっても状態の良いものは希少で非常に高価なものが多いですよね。それでも永久磁石にはない魅力を手間とお金をかけてでも獲得したいオーディオマニアの方々は、その第一級の音質を求めて励磁型スピーカーを高く評価しています。さて今回のブログでは、そんなフィールドスピーカーについて深掘りしていきたいと思います。

 

 

画像引用元:Western Electric 公式サイト

フィールドスピーカーの歴史

フィールド型のユニットが盛んに生産されていた1930年代~40年代は、良質なマグネットを入手するのが困難な時代でもありました。磁気回路に電磁石を採用したフィールド型スピーカーは、簡単に言うと鉄にコイルを巻きつけて電気を流すと磁石になる仕組みを利用したものです。小学校の理科の授業で行なった電気を流す実験を覚えている方もいらっしゃるかもしれませんね。

フィールド型は強い磁界を作る為に、動くボイスコイルの外側に電磁石を作る為のコイルとそのコイルを磁化する為の電源を必要とします。大変な手間とコストが掛かるフィールド型ですが、その性能は現代の高機能素材を使用し量産性を優先させたスピーカーとは一線を画す総じて優秀な音質を生み出します。

しかし、時代が進み永久磁石の開発が進むと、あっという間にフィールド型産業が終焉を迎えてしまったのです。というのも、専用電源やメンテナンスを必要とし熱を持つといったフィールド型の難点を、手軽でメンテナンスも必要なくコストも安く上がる永久磁石が解決してしまったからです。そうして、磁界の中にコイルを置いて、音声信号をコイルに通す事で磁界の中のコイルを動かすアルニコ型やフェライト型、更にネオジウム型といった高性能な磁石が安定供給されるようになり、現代のほぼすべてのスピーカーが永久磁石型に変わっていきました。

 

画像引用元:Stereo Sound ONLINE

フィールド型(励磁型)の特徴

フィールド型(励磁型)とは磁気回路に永久磁石を使用せず、フィールドコイルと呼ばれる巻状銅線を用いて、軟磁性素材である磁気回路自体を電磁石化させる方法です。 この場合、磁気回路は一貫した単一素材で構成されているため、回路内は全て一律の透磁率を獲得出来ます。それにより、永久磁石を磁気回路内に導入することによる透磁率の違い、つまり磁気回路を構成する部品間の材質の違いがないため、均一で理想的な磁気の流れを生み出すことが可能となります。

スピーカーは振動板の駆動に対するブレーキの良さが音質向上において大変重要なポイントですが、この均一で見事な磁気の流れが、制動力となる要素の内、最も大きな効力を持つ電磁気制動力を文句無しの形で実現させます。
そしてアンプからの信号入力→ボイスコイルへ伝導→振動板の駆動→音響変換といった、いわゆるオーディオ機器での音楽再生の際、ボイスコイルからは逆起電力が生まれ、振動系を元に戻そうとする力が働きます。 この逆起電力とそれによって発生する磁気の流れから生まれる電磁気制動力を、障害なく滑らかに最高限まで活用できるのがフィールド型(励磁型)磁気回路なのです。
このフィールド型磁気回路の持つ高能率で見事な特性が、卓越した駆動と制動力、クリーンで明瞭な音質を実現しています。

電磁石と永久磁石の違い

前述したようにフィールド型の磁気回路から生み出される純然たる音質は永久磁石では叶わないレベルの高いものであると言われます。一方で、永久磁石は現代のハイテク素材を使用し扱い易さと量産性に優れています。特にアルニコマグネットは音質面では最も定評があります。

アルニコマグネット、フェライトマグネットの違いに関しては「こちら」のブログに詳しく書いてありますのでご参考までにご覧ください。

減磁について

減磁とは、時間が経過したり外的環境の影響により磁力が弱まる現象のことです。
永久磁石と呼ばれているマグネットの磁力は半永久的に持続しますが、マグネットの性質によって色々な種類の減磁があります。

例えばアルニコマグネットでよく言われているのが、ボイスコイルに強い電流が入ったときに磁界が動くために起きるパワー減磁です。また、フェライトマグネットはセラミックでできており、元々磁力が低いのでパワー減磁は起きませんが低音で減磁する特性があります。近年使われているネオジムマグネットは高温に弱い性質を持っている為、温度が高まるにつれて減磁し、温度が下がっても磁力は回復することがありません。一般的に減磁が進むと高音が出にくくなり、音質的には弱いサウンドになっていきます。このように永久磁石を使用したスピーカーは、性能の劣化が進むといった特徴があります。

一方で、電磁石を使用したフィールド型スピーカーは減磁が起こりません。従って、磁気回路としてもエネルギー変換の能率においてもフィールド型は優れていると言えるでしょう。これらの特質が多くのオーディオマニアの方々を魅了している要因の一つであるのでしょう。

 

画像引用元:Western Electric 公式サイト

フィールド型で有名なスピーカーブランド

1882年に発足した米国Western Electric(ウエスタン・エレクトリック)社は、アレキサンダー・グラハム・ベルによる電話機の発明をルーツとする世界屈指の電信・電話会社AT&Tと、その有名な研究所「ベル・テレフォン・ラボラトリー」の製造部門として数多くの偉業を成し遂げた、今日のHiFiオーディオの元祖であり、常にその最高峰に君臨し続けいている存在です。そんなウエスタン・エレクトリック(WE)やRCAなどの名器たちも多くは、このフィールドタイプです。

『フィールド型で有名なスピーカーブランド』
Western Electric
Jensen
Kanno
SIEMENS etc…

 

まとめ

フィールド型(励磁型)スピーカーの特徴や、電磁石と永久磁石の違いをご理解いただけたかと思います。フィールド型には、ダイナミック型、アルニコ型、フェライト型といった現代の先端技術を用いて量産性を最優先させたスピーカーには無い、確かな実力を備えた魅力が存在しています。時代の流れとともに手間とお金の掛かるフィールド型が消失していったのは当然かもしれませんが、こうしたフィールド型の音質や能率は再評価されつつあります。現在ではフィールド型スピーカーのほとんどがビンテージとして販売されていますが、非常に高価でかつ手に入りにくいものとなっています。

私ども、オーディオランドは、皆様がずっと大切にされてきたスピーカーの価値を更に高めることを本分とし、オーディオランドにやってきたオーディオ達を丁寧に修理し次のオーナー様へお繋ぎしています。
これからもオーディオファンの皆様が、素晴らしいスピーカーから奏でられる音楽とともに、心穏やかな生活を送れますよう心から祈っています。

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