やはりアルニコマグネットのスピーカーは良い音なのか?(フェライトマグネットとの比較)

いつの時代にもオーディオマニアの間では、素材や構造の違いから「〇〇を使った方が音が良い!」という話題がまことしやかにささやかれています。
例えそれが人間の感覚では認識できないような微細な数値の世界であってもです^^
好みや思い入れなど個人の価値観が少なからず(かなり?)影響する高級オーディオ業界ですので、そのようなこだわりやストーリーが老舗メーカーのブランド力に繋がっているのかもしれません。

さて、今回の記事では昔からオーディオマニアの間で議論されているテーマである「アルニコマグネットはフェライトマグネットより音が良いのか」についてまとめてみました。
各メーカーでも議論があり、これだという定説は出ていないですし、やっぱりアルニコマグネットが至高という方や今のフェライトマグネットはアルニコとさほど音質は変わらないという方様々です。
一筋縄ではいかない奥の深いスピーカーの話題ですがどうぞお付き合いください。

アルニコマグネットについてはマグネットの役割から特徴などこちらの記事にも詳しく書いておりますのでご参考までに。
アルニコマグネット・スピーカーユニットの歴史

マグネットの基礎知識

そもそもスピーカーのマグネットは1950~70年代はアルニコマグネットが主流でした。
アルニコマグネットには主に鉄(fe)、アルミニウム(al)、ニッケル(ni)、コバルト(co)から作られていますが、1970年代からコバルト(co)の価格が高騰し、代わって登場したのがフェライトマグネットという経緯があります。
アルニコとフェライト、両者を比較する上で回路や減磁について先に触れていた方がわかりやすいと思うので書いておきます。

マグネットには向いている磁気回路の構造がある(内磁型と外磁型)


(画像引用元:Wikipedia)
▲左が外磁型(フェライトマグネット)、右が内磁型(アルニコマグネット)

マグネットを語る上で外せないのが電磁回路の形状です。
マグネットの位置によって上の図のように外磁型と内磁型に分類されます。

内磁型(アルニコマグネット)

アルニコマグネットの場合は丸棒型をしており、マグネットが中に配置されている内磁型が一般的です。
この構造は磁力を漏れが少なく磁気エネルギーが上のキャップに集中し、これが音質の良さの要因と以前から言われております。
また、アルニコマグネットの主な素材であるアルミニウム(al)、ニッケル(ni)、コバルト(co)は電流を流したときに磁界が変化しにくくゼロ点電位が安定する特徴があります。
ボイスコイルはゼロ点電位を基準に動き始めるので、磁界そのものが動くと音がぼやける原因になります。

外磁型(フェライトマグネット)

一方、フェライトマグネットはマグネットが外についている外磁型です。
アルニコは磁力が強く丸い棒状にして電流を流すのが効率的ですが、フェライトはセラミックでできており磁力が弱いため、アルニコと同等の磁力を得るには長さを短く太くバームクーヘンのような円盤の形にする必要があります。
そのため、フェライトマグネットのスピーカーは設計上大型になる傾向がありますが最近は技術面の進化で小型化が進んでいます。
また磁力が外に盛れるため、周辺機器をスピーカーに近づけると磁場が狂ってしまいます。
そのためブラウン菅のテレビにの近くにそのまま外磁型のスピーカーを設置ができず、キャンセルマグネットを付けたり、磁気を閉じ込めるカバーを装着していました。

「それならフェライトマグネットも内磁型にすればいいじゃないか」という意見が出てくると思います。
しかし、フェライトマグネットは内磁型にできないのです。
詳細までは説明が難しいですが、磁束密度、磁化、磁場の関係を表すヒステリシス曲線(B-H曲線)というものがあります。
下の図ではフェライトマグネットが緩やかな線なのに対し、アルニコマグネットは急上昇急カーブです。
この磁石の性質の違いから回路の使い方が全く異なるためフェライトマグネットは外磁型にせざるを得ないのです。

(キャプチャ画像引用元:川上磁石株式会社 永久磁石 特性比較表)

マグネットの磁力の変化(減磁)について


マグネットの性質によって磁力は時間が経ったり外的環境の影響によって磁力が弱まる現象が起こります
。これを「減磁」と言います。
永久磁石と呼ばれているマグネットの磁力は半永久的に持続しますが、色々な種類の減磁あります。

・温度の変化などで一時的に磁力を失っても状態が元に戻ると磁力も元に戻る減磁
・コンパスの針のように磁力を失っても再び磁石で磁力を与えれば復活する減磁
・金属の構造の崩れによって磁力が元に戻らない減磁

マグネットは室温で放置しているだけでも僅かに減磁し続けています(経年減磁)。
ただ、その変化率は本当に微々たるもので10年、20年の使用には問題の無い範囲です。

アルニコマグネットでよく言われているのが、この自然な経年減磁ではなく、ボイスコイルに強い電流が入ったときに磁界が動くために起きるパワー減磁です。
このパワー減磁は専門の業者に頼み再着磁しますが、ネットの声を見てみるとあまり変わらなかったと言う人や劇的に変わったと言う人もおり効果は条件によってまちまちのようです。

フェライトマグニネットはセラミックでできており元々磁力が低いので、上述したようなパワー減磁の心配は無いのですが、低音で減磁する特性があります。
と言ってもマイナス40度の世界なので使用上困ることは無いでしょう。

また、近年使われているネオジムマグネットは高温に弱い性質を持っています。
温度が高まるにつれて減磁し、温度が下がってもその磁力は回復しない減磁です。
温度の耐性も上がってきていますが大出力の発熱が大きなスピーカーには向いていません。

アルニコマグネットとフェライトマグネットの違い


というわけで、まずは電気回路や磁力のお話を深掘りさせていただきました。
アルニコマグネットの持つ性質や構造上による音質に有利な点は少し理解できたと思います。
それでは本題のアルニコマグニネットとフェライトマグネットの比較に入ります。

音質について

アルニコマグネットはその特性により前述した内磁型のメリットを十分に活かすことができるマグネットです。
音質的に他のマグネットより劣るという声は聞きません、音質面では最も定評があります。
ネオジウムと比べたときはオーディオファンの間でも評価が別れるところです。

フェライトマグネットは一般的に、音質の評価はアルニコに比べ高くはありません。
しかし悪いという訳ではなく、その違いを吉と捉えるか凶と捉えるか個人の価値観になります。
フェライトマグネットも形や大きさ次第で変わってきますしね。
YouTubeの海外アカウントでは「アルニコマグネット vs フェライトマグネット」の比較動画が多数アップされており興味深かったですよ。

価格について

アルニコマグネットは希少金属を使用していることから価格が高くなります。
ネオジウム以上に高価な素材で作られています。
1970年代までは主流でしたが、今やコスト高で一部の高級オーディオにしか使われていません。
近年は大型のものが激減して以前よりも価格が高くなっています。
中古市場でも「アルニコ」の文字がスピーカーのスペックに入っているだけで高値がついていますね。
その価格差に似合う音質の違いを疑問視する声もあるもの事実です。

一方、フェライトマグネットはコスト面で言うとスピーカーで使われているマグネットの中で最も安いマグネットです。
現在、流通しているほとんどのスピーカーがフェライトマグネットですが、JBLは一部の上級スピーカーにアルニコマグネットを使用したり、日本のクリプトンはアルニコマグネットにこだわったスピーカー作りををしています。

磁気回路の構造について

その性質上、アルニコマグネットは内磁型の磁気回路に向いています。
まれに外磁型のアルニコマグネットもありますが、内磁型のメリットがなくなってしまうのは勿体ないですね。
内磁型の構造はゼロ点電位がぶれにくく、これがアルニコマグネットの音の安定感やクリアさ、力強さに繋がっていると見られています。

フェライトマグネットはその性質上どうしてもマグネットが外側にある外磁型の構造になります。
アルニコマグネットとフェライトマグネットでは約2倍ほどの磁力の違いがあり、フェライトマグネットがこれを補うためには体積を大きくしたり形状の工夫が必要です。
最近では技術の進歩もあり一概には言えませんが、外にマグネットがあるので内磁型よりも外磁型は磁力が外に漏れゼロ点電位が動きやすくなります。

減磁、耐性について

アルニコマグネットは、温度への耐性が高温・低音においても他のマグネットと比べて最も優秀です。
そのため、厳しい環境で精度を要求される測定器にも使われています。
ただ、パワー減磁による消耗に弱いデメリットがあります。

その点、フェライトマグネットはパワー減磁に強く高温にも耐性があります。
なので大型のスピーカーや大出力を求められる現場には最適です。
寒さには弱いという性質はありますが、大寒波の氷の世界のような環境下では減磁に注意ですが日常使いでは影響はありません。
素材のセラミックは錆にも強く野外のライブスピーカーやカーステレオにも向いています。

たしかにアルニコマグネットの音は良い!しかしフェライトマグネットとの差は?

今回色々な情報を拝見させていただきながら見えてきたことは、時代がアルニコマグネットからフェライトマグネットに切り替わったとき、当時のフェライトマグネットは技術的にも成熟しておらず、「アルニコマグネットの方が音が良かった」というユーザーの印象が今でも根強いのかなということです。

フェライトマグネットが出始めの頃はたしかにアルニコマグネットと比較すると音質は劣っていました。
各メーカーがフェライトマグネットの音を向上させるために、歪みを低減させるための磁気回路を開発したり、電気を通す素材をフェライトマグネットにブレンドしてみたり、試行錯誤していた時代がありました。
ただ最近はフェライトであっても最高の音を出してくれるスピーカーはたくさんあり、ネオジウムも進化してきています。
「あくまで個人的に」ですが、アルニコマグネットの音の解析度は素晴らしいものがあると感じます。
しかしマグネット以外にも様々な要素がスピーカーには影響しますし、「フェライトはアルニコに及ばない」と一言で言えないのがやはり現状です。

同じ作りでもヴィンテージのバイオリンの音色はどこか情緒があるように、製造の段階で素材にもバラツキ(個性)はあり、スピーカーも生きている楽器のようなものだと思います。
だからこそ、私どもオーディオランドはお客様の大切なオーディオと1点1点真剣に向き合っております。

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