アナログ音とデジタル音、どちらが好き? テクニカルだけでは語れないオーディオの魅力
「蓄音機から流れる音がたまらなく好き」、「目の前で演奏を聞くよりもレコードの音に耳を傾けるのが好き」というお客様にもこれまでお会いしてきました。
音質的には現代の再生機器に劣るのは言うまでもないですが、それを上回る魅力を感じていらっしゃるんですね。
技術は進化しても変わらないオーディオの世界観や魅力についてぼやいてみます。
目次
SPレコードの技術的な制限にこそリアリティが濃縮されている
究極のアナログと言えばSPレコードでしょうか。
SPとは「スタンダードプレーイング」の略です。
1890年後半から製造されたレコードで日本では1962年を最後に生産されなくなくました。
再生時間は10インチのもので片面4分ほどという制限があり、1分間に78回転の高速で回転する蓄音機用のレコードです。
ちなみにLPレコードは1分間に33回転でSPより音域も広がりノイズも少ないです。
レコードは針と盤の摩擦で音を奏でているので、摩耗します。
特に高音は再生するたびに薄れていき、長く楽しむにはいちいち針を変えたり、、、とにかく手間がかかります。
録音はマイクで拾った音を直接レコード盤にプレスする「ダイレクトカッティング方式」で行われました。
マイクの前にアーティストが集合して音を拾う一発録りなので、短い時間の中でいかに中身の濃いプレーをするかが重要です。
そのライブ感がデジタルに無い大きな魅力でしょう。
出た音をそのままレコード盤に刻むわけですから、その場の雰囲気がリアルに記録されているのです。
ある意味、現代の加工された音源よりも生々しいリアリティな世界観があり、ノイズや音質の制限がかえって聞く側の想像力を働かせるのだと思います。
その時代の音楽はその時代の楽しみ方で聞くと趣がさらに増しますね。
現代のデジタルオーディオ機器は優等生、一方アナログは荒削りな腕白坊主。
だけどアナログの方が魅力的という、なんとも人間味あふれる性質がレコードにはあります。
歴史は繰り返す!昨今のレコードブームは本物?
CDが登場してからレコードは下火になりましたが、近年ヨーロッパではLPレコードの生産が100万枚突破し、アメリカでも100万枚突破しました。
日本でもじわじわレコード生産数が増加しています。
ロックやジャズ、クラシックなど、ジャンルを問わず数々の復刻版や新譜がリリースされています。
HMV record shopなど大手のレコード取扱店もじわじわ増え、中々の盛況ぶりです。
また、アジアで唯一のレコードプレス工場「東洋化成」は数年先までLP、シングル盤のプレスが決まっておりフル稼働と言います。
60代を中心としたアタログ現役世代の回帰がレコードブームを牽引しています。
また、若者にとっては新鮮でかっこよく感じる面もあるでしょう。
最近で音楽をダウンロードするのが当たり前で「おすすめの名盤」と聞いてもピンと来ないteen世代も珍しくないとか。
盛り上がるヴィンテージ市場
ヴィンテージ=骨董品というイメージは昔の話で、今は往年の名器を楽しんでいる人が増えている感じがします。
古くはウェスタン・エレクトリックなどのトーキー時代になりますが、マランツ7やマッキントッシュMC275、JBLのパラゴン、タンノイのオートグラフ、当時は買えなかった逸品がヴィンテージ市場では動いています。
インターネットが発達したことで、情報量が増え、お目当ての製品を見つけやすくなったこともブームを後押ししています。
修理も昔ほど困難ではなく、修理パーツの充実により昔よりも安心して使えるようになりましたね。
ヴィンテージは入手やメンテナンスが難しいのは事実ですが、それなりに市場は確立されています。
オーディオランドでもヴィンテージ買取には力を入れております!
熟練の修理スタッフがおりますので、修理もお気軽にお声かけくださいね。
一方でオーディオ業界はハイレゾの大ブーム
オーディオテクノロジーの革命といえばCDの登場ですが、それを突き放す勢いなのが「ハイレゾ」です。
ハイレゾとはアドビ社から画像加工・補正ソフトのPhotoshopがリリースされ、マニュアルにあった「レゾリューション」という言葉を略して「レゾ」からきてきます。
「この画像、レゾ足りてる?」「レゾが低い」など。
ハイレゾの語源は「高解像度印刷」です。
ハイレゾの実力はというと、CDの3倍以上、MP3やAACなどの圧縮音源の数十倍の情報量を持つ音源です。
この違いかCD以上の音の豊かさを表現できるというわけです。
定義としてはCD以上の情報スペックを持っていればハイレゾと名乗ることができます。
高解析度の音源は以前からあるにはありましたが、これらを再生するにはかなり高額な機器が必要だったため、あまり普及しませんでした。
ハイレゾが普及したのはインターネット環境のインフラが充実したことが大きく影響しています。
ハイレゾ音源を楽しむにはハイレゾ対応機器の購入が必要と思われがちですが、現状のアンプやスピーカーでも十分に楽しむことはできます。
ハイレゾと真空管アンプは意外にも相性が良いという情報もあります。
ハードディスク搭載のプレーヤーやネットワークプレーヤー、もしくはUSB-DACの用意は最低限必要です。
もちろんハイレゾ対応の機器であれば最大限のパフォーマンスを発揮しますが、そうでなくともCDとハイレゾは違いを感じることができますよ。
ハイレゾをより良い音で聞くには?クリアサウンドの高みを目指す…
最近ではハイレゾ対応のオーディオ機器も増え、チューニングノウハウも出てきています。
デジタルだから手放しでOK!味気無くてつまらない!というわけではないんですね。
ハイスペックの音源を生かすも殺すも聞き手次第です。
オーディオ用LANケーブルを使う
ハイレゾ音源のデータサイズはCDの3~7倍にも及びます。
微細な電気信号がたっぷり含まれているのでノイズや振動にはこれまで以上にシビアになって損はありません。
立派なネットワークプレーヤーを用意してもNASやルーター、パソコンなどの周辺環境がよろしくなければハイレゾの真価を引き出すのが難しくなります。
とりわけケーブル系のノイズ対策は、従来のオーディオ同様に大切です。
電源をクリーンに
家庭用のAC電源の波形が乱れているのは事実。
ルーターやパソコンは元々オーディオ機器として作られていないので、ノイズからのガードは甘いです。
電源を変えるような電気工事の資格は必要ありません。
コンセントプレートをオーディオ使用に付け替えると、高域のノイズが減衰し静寂感が増します。
電源ボックスや電源ケーブルもサエクやラックスマンなど各社出回っています。
ボードやインシュレーターの存在意義UP
オーディオで共通なのはスピーカーによる床振動です。これがCDプレーヤーやアンプを揺らします。
ハイレゾの場合は、ネットワークプレーヤーやDACはメカレスですが、NASはHDDによる回転振動があり、パソコンは放熱のためのファンノイズもあります。
ルーターやNAS、USB-DACなどコンパクトなものはまとめてボードに載せて、大きいものは別のボードかインシュレーターをうまく使いましょう。
スーパートゥイーターやサブウーファーで音域をより豊かに
ハイレゾブームでスーパートゥイーターの売れ行きが好調らしいです。
CDではカットされている20kHz以上のスーパー高音域にも、聞こえはしませんが脳波を刺激する倍音成分が含まれているそうです。
また、ほどよく低音域を補強させると音場感が増します。ノイズ対策もしつつ、システム全体のスケールアップにサブウーファーの補強もおすすめです。
デジタル(ハイレゾ・CD)とアナログ(レコード)とで聞き比べたい名曲5選
今だからこそ、ハイレゾ・CD・レコードで聴き比べたい名曲があります。
オーディオ初心者からマニアまで、あるいは幅広い年齢層を意識してジャンルごとに聴き比べたい名曲を選んでみました。
とはいえ私個人の価値観も入っているのは否めませんのでご了承ください。
【クラシック】ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 / 辻井伸行×佐渡 裕
盲目の天才ピアニスト辻井伸行さんが世に出てから、透き通った音の美しさにすっかり私はファンになりました。
いきなり個人的な押しが全面に出てしまいましたね(汗)
この曲はピアノソリストの難曲であり、オーケストラとのハーモニーや、曲調のパワフルな変化、音域の豊かさなど、たくさんの音楽的な要素が詰まっています。
レコードでも数々のオーケストラが演奏しているものが残っており、まさに時代を超えて愛されるクラシック曲です。
音の瑞々しさやリアルさを丁寧に聞いていると時間を忘れてしまいます。
【ジャズ】Don’t Know Why / Norah Jones
女性ボーカルはジャズの華!
息遣いの細やかな違いに注目して聴きたいところです。
また、ジャズの醍醐味であるライブ感がハイレゾ音源だとどこまで変わって聞こえるでしょうか。
細やかなギターの入りから中盤になるにつれてベースとドラムが加わる心地良い盛り上がりは?
空間をエレガントに変えてしまうこの曲は是非とも高音質で聞きたいですね。
私が学生時代にバーテンダーをしていた店でよく流れていました(どうでもいいか)
【ロック】Eagles / Hotel California
ベタ過ぎてすみません。散々迷った挙句やっぱりこの曲を選びました。
乾いたドラムの音と渋いボーカルもさることながら、注目すべきはやはりギターです。
うちの親父の言葉を借りるなら「エレキが泣いとる」!笑
高音域のギターソロ2重奏は、レコードの生々しさも捨てがたいですが、ハイレゾだとより鋭く感じられるでしょう。
【ソウル】Stand By Me / Ben E. King
映画の主題歌としても有名なこの曲ですが、歳を重ねるほどに哀愁を感じこの曲が好きになるのは私だけでしょうか。
パワフルなボーカルとコーラスのグルーヴ感、リズム感は色あせません。
ターンテーブルでそっと針を落として回るレコードからこの曲が流れてきたら今の若い人でも感動するものがあると思います。
個人的にはアナログで試行錯誤しながら楽しみたい曲です。
【フュージョン】Palladíum / Weather Report
ジャズとエレクトリックサウンドの融合、いち早くシンセサイザーを取り入れた音楽は当時の人をワクワクさせました。
とにかくいろんな音が入っていますが、シンセが引っ張るハイファイサウンドなので、ハイレゾでどこまで変わるか聞いてみてください。
エレクトリックでテクニカルだけど古いから音が悪かった音楽はハイレゾで新しく蘇ります。
音質やオーディオ機器は変わっても、変わらないものがある
技術の発達により手軽に音楽を楽しむことができる時代になりました。
ここ数年はダウンロード音楽がトレンドになっている中でどうオーディオと向き合うか、ますます聞き手の思いが輪郭を増してきますね。
私はハイレゾもCDもアナログも積極的に楽しみたい主義ですが、読者の皆様はいかがでしょうか。
オーディオは「古かろう、安かろう、悪かろう」のような一括りで語れるものではありません。
オーディオランドでは気持ちの良いお取引をしていただけるよう、オーディオの価値をしっかり認めて高額買取させていただきます!